food
2015.03.19

Cook 'n' Eat!

volume 2チーズからDIY!な、ピザパーティー

  • Text葛原信太郎
  • Photo伊藤 菜衣子

”やってみた”レベルの高すぎる人たちがつくる、チーズと暮らしの話。[後半]

今回は、暮らしかた冒険家が、札幌で出会った、気が合いすぎる友人たちとチーズをつくるお話。その友人たちとは、 畑で食材をつくるところからカフェを営む「たべるとくらしの研究所」の安斎夫妻と、元農家で子どもと大人への贈り物専門店「BROTHER SUN SISTER MOON」の店主藤田くん。全人類を”やってみた度”で順番に並べたら、相当上位にいるであろうちょっと変な人たちが集まって、どんなチーズができあがるんでしょうか?

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―― さて、前半で作った失敗かもしれないチーズですが、、、上手くできなかったらと念には念をと、保険にスーパーマーケットで買っておいた、市販のモッツアレラチーズと食べ比べ。

明子:あれ、食感はいいんだけど、油っぽい。あれ、もう元には戻れなくなっちゃった?

藤田:うん、戻れなくなってるね。

伸也:またまた〜。大げさでしょ。

菜衣子:いや、戻れないかもしれない…。つくったやつのほうが、サラッとしてて、いくらでもたべれちゃう感じ。なんだ、この違いは…。

―― 初めてのチーズづくりは、失敗したと思っていたけど大成功でした。そのチーズを使ってピザも作っちゃおうということになりました。「たべるとくらしの研究所」特製ピザ生地に、畑で取れたトマトソース、そしてできたてのモッツアレラチーズを乗せます。

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ピザは薪ストーブのオーブンで。縦長で2つのドアがついたピキャンオーブン。2重構造になった下段に上段の煙が循環する仕組み。

薪は、近所の整地で出たものをもらい、ジョニーが玉切りして、割ったもの。と言い切りたいところですが、それだけでは足りずに薪ストーブ屋さんから買っている道産材も半分。

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ジョニー:今年は薪集めが甘かったなぁ。その年に使う分はせめて春には割っておかないとだね。今年こそは、こつこつやる。

菜衣子:今年の春夏は忙しすぎたね…。あと、もっとアンテナをピーーーンと張らないとね。もっと伐採している人に声かけなきゃね。去年、安斎くんが薪ボイラー入れたときの苦労がわかってきたぞ…。

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――こんな会話も”やってみた”人たちだから生まれます。OFF-GRID LIFEは、トライ&エラーの繰り返しです。

薪ストーブのオーブン部分の温度は140度。ピザ釜のようなパリッパリのピザには少し届かない。せっせ、せっせと薪を足し、後半は、180度くらいに。

だいたいオフグリッドな暖房で、家の中はぽかぽかで、子どもたちの服装は、常夏状態。

熱々のピザにかけるのはシェア畑で自然栽培でつくった青唐辛子の酢漬けとバジルソース。こちらも「たべるとくらしの研究所」お手製。

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菜衣子:なるほどーーー。あの山のような青唐辛子は酢漬けにすればよかったのかぁ!!!!大量すぎて、見ないふりしていたのが悔やまれる…。

明子:唐辛子をもっと細かくして、熟成させるとタバスコなんだよ。

菜衣子:タバスコも自給できちゃうのか…。

畑をシェアするということは、豊作すぎるものも同じ。そこからそれぞれの創意工夫で食べたり、保存したり。こうやって集ってごはんを食べることで、その情報が共有されていくから、知恵がどんどんたまってゆくのです。知恵袋に知恵がたまってゆくならば、年を重ねることもまた、もっとすてきなことに感じられる気がする今日この頃です。

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「自立」を真剣に考えたら「自給」にたどり着いた。

明子:震災のとき、自立していると思っていた自分が、実は全く自立していなかったんだ、ということに気がついたの。「自立して生きていく」っていうと経済的な自立のことを差しているけれど、その尺度が変わると、食べて行くことにも不自由するんだ、と。

菜衣子:うんうん。尺度を変えると、まじ危うい足下よ…って感覚が強烈だったね。経済以外の尺度があのときハッキリ見えてしまった感じ。

明子:生き物として、生きていくことの基本の自立がてきてくると、安心感があるかもなぁ、って。何があっても大丈夫とか、どこへ行っても大丈夫とか…。自立ということを真剣に考えていったら「自給」ってことにたどり着いた。

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藤田:いまやっている「やぎ畑」がもうちょっと広くなって、ある程度のものが取れて、できれば家畜も飼って、みたいなね。畑の維持管理に必要なお金だけ払えば、食べていけるじゃん。それって自立というか、自由だよね、いろんな重力から。
そもそも農耕文化ってさ、地球のひとつの営みの中に、ちょっと手を入れて余剰をもらうという生き方でしょ。とはいえ、カロリー的に自給できる状態を目指しているかというと、そうではないよね。おいしいとか、たのしいとか、おまけがついた自給というか。

ジョニー:そう、「食べる」という営みは生きてくために必要だけど、それだけのためにするのはもったいないよね。食べること=カロリーの摂取だけで良いのならば、他の生き物と変わらないし。そうじゃなくって、もっと食べること自体を楽しんだり、美味しいものを食べていちいち感動したりしたいよね。それは人間だけしかできないしね。だから僕が「自給」で大事にしたいのは、食卓を豊かにするってことなのかもなあ。人生を豊かにするっていうか。でも今はまだ自分は家庭菜園の延長のようなレベルだけど…。

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伸也:でも、本気でヤバい、ってなったらやるよね。できるよね。事前にどの程度できるか体感しておいたっていうのは自信になる。こういう言い方だと、備えているっていう見方もできるけど、やっちゃったほうがクオリティが高い暮らしに近づいているというか、贅沢な遊びっていうかね。

藤田:地位とかお金とかは、なくなったりするけれど、技術は自分に残るからね。なくならないものを貯めたほうがいいよね。

菜衣子:あぁ、それは確かにそうだなぁ。熊本の家、めちゃくちゃDIYで劇的BEFORE/AFTERしたんだけども、札幌に来るタイミングで、手放したんだよね。もし改装をすべて業者さんにやってもらっていたら、もっと悩んだんじゃないかなぁ。解体したり、漆喰塗ったり、床張ったり、小屋つくったり、土間つくったり、自分たちでやってみて、ノウハウは自分たちの中にあるから、札幌でもまたできるな、って思っているから、身軽に動けてしまうというか。自由でいる、ということは、技術を持っているということと、かなりリンクしているのかもね。

―― 食べものや家を買うだけじゃ、技術はついてこないですね。買ったほうが安上がりかもしれないけど、そこには、貨幣的な軸では計れないことことがあります。2015年、あなたが手に入れるべきは「確かな技術」かもしれない。どんどん”やってみて”、どんどんできることを増やして、自由でオフグリッドな毎日を作っていきませんか?