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2014.09.18

暮らしかた冒険家 meets

volume 3暮らしかた冒険家×後藤正文(ASIAN KUNG-FU GENERATION)音だって未来だって“選べる”

  • Text鈴木 絵美里
  • Photo伊藤 菜衣子, 池田 秀紀

第二回|『NANO-MUGEN FESTIVAL』ソーラーエネルギーは意思表示だし、自分にとっての“vote”

今回、暮らしかた冒険家が訪ねたのは、バンドASIAN KUNG-FU GENERATIONのフロントマン、ゴッチこと後藤正文さん。音楽のみならず、2011年からは未来を考える新聞『THE FUTURE TIMES』を制作、無料で配布するなど、30代ミュージシャンきってのオピニオンリーダー的な存在です。これまでにも、脱原発の音楽イベント『NO NUKES』の現場などで交流を深めてきた暮らしかた冒険家と後藤さん。自身のライブステージにも太陽光エネルギーを用いている彼とともに、今回は21世紀を担う世代の「豊かさ」や「お金の使い方」、「伝え方」のおはなしをじっくりしてきました。ちなみに取材は、北海道で開催されている『RISING SUN ROCK FESTIVAL「BOHEMIAN GARDEN」に後藤さんがソロで出演された後に行われました。そんなフェス会場の熱も少し帯びたキャッチボール、どうぞお楽しみください。
ASIAN KUNG-FU GENERATIONは2012年の全国ツアーも、その後のNANO-MUGEN FESTIVALを開催する際にも、ステージ機材すべてとステージ周りの照明などをソーラーエネルギーでまかなってきました。 今回は、NANO-MUGEN FESTIVALを通した「エネルギーを選ぶこと」について、お話を伺います。

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横浜アリーナのフロアを立体的に演出するこのLEDライトも、ソーラーでまかなわれている

横浜アリーナのフロアを立体的に演出するこのLEDライトも、ソーラーでまかなわれている

菜衣子:アジカンが主催している『NANO-MUGEN FESTIVAL』についてもお話を伺いたいです。フェスではステージ周りのすべてと会場照明の一部をソーラーエネルギーでまかなっていらっしゃる、と聞きましたが、どういう想いがあるのでしょうか?

後藤:ナノムゲンでのソーラーエネルギー使用については「これをやっている俺たちってすごいだろ」って言いたいわけでは決してなくて、少しでもこのソーラーにまつわるコストカットに繋がったらいいなあと思って今は投資をしている感じなんです。

少しでも投資して、技術の開発が進むことで費用が安くなっていけば自分たちもまた使いやすくなるし。そして今はまだバッテリーがものすごく大きかったりする。だけど電池がもっと小型化するとか、容量が増えるようになればツアーでの持ち運びも全然楽になっていくし。

会場である横浜アリーナの裏手には150枚のソーラーパネルを設置。駐車場を借り切り充電中

会場である横浜アリーナの裏手には150枚のソーラーパネルを設置。駐車場を借り切り充電中

ソーラーパネルと繋ぐことですぐに蓄電、そのままステージ裏で発電できるコンパクトなシステム。常時13台が蓄電スタンバイ

ソーラーパネルと繋ぐことですぐに蓄電、そのままステージ裏で発電できるコンパクトなシステム。常時13台が蓄電スタンバイ

30台の蓄電池で、リハーサルを含めた合計3日間のステージの音響周りすべての電力と照明の数々をまかなう

30台の蓄電池で、リハーサルを含めた合計3日間のステージの音響周りすべての電力と照明の数々をまかなう

後藤:ソーラーエネルギーはもう自分にとっての「VOTE」、つまり「投票」なんです。なんていうか、自分はこっちのほうが気持ちいいからこっちに投票する。ソーラーの蓄電池でライブできるんだったら、最高じゃない! 歯に衣着せず好きなこと言えるしさ。

ジョニー:それ、オフグリッドですね。これまでの電力との繋がりを断つ。そういう意味でオフグリッドもひとつの投票、意思表示ですね。

後藤:そう、現状で僕らが現場で使っているソーラー発電って何も「しがらみのない」エネルギー。でも、それがかっこいいとかっていうことよりは、「俺たちはこっちの電気を使いたいんだ」っていうことの意思表示なんだよ。で、実際にソーラー発電と蓄電池で音を出すと、少し、ノイズが減る。

菜衣子:へー!直流だから?

後藤:そうだね、交流じゃないからだと思う。ノイズが減って、ちょっとブライトになるかなあ、俺の感覚だと。こう、ちょっとギラっとする感じがある。でね、その音の感じがいいかどうかは人によって違うからわかんないけど(笑)!「俺はちょっとソーラー(の音)しんどいっすわ」っていう人もいるかもしれない。けど、俺は好き。

菜衣子:「ギラっとする」のがよかったり合わなかったり。好みの問題。

後藤:そうね。で、リハーサルとかで使い分けてみたこともある。ソーラーで出している音だと安定しているからいいなあ、って思ったよ。大きいスタジオとかだと、エレベーター動いただけで電圧が変わって、音がちょっと変わったりするから。そういうのも避けられるかなあ。

菜衣子:なるほど、独立電源だと「どこに行っても安定した音が出る」っていうことなんですね。発電所からの電気だとその場所から遠ざかることで音が悪くなる、みたいなことも聞いたことあるけれど。

後藤:蓄電池だからどこでも安定した音が出るっていうのは確かにあると思う。まあ、音って国が違えば電圧も異なるしね。

菜衣子:レコーディングでロンドンに行くとかっていうのもそういうことですか?

後藤:そうだね。ロンドンに行ったときは、やっぱり「音がデカい」って感じたけど。なんか、音が詰まって聴こえる、というような。

菜衣子:じゃあ…ソーラーにしたからって、ロンドンみたいにはならないってことですか(笑)

後藤:そうね、それは電圧の違いのほうが大きいかな。イギリスだと220~240Vとかあるからなあ。(※日本は100V)それでも今の状況ではここまでだ、という制限の中でベストを尽くせばいいんだと思っている。本当に音にこだわる人はケーブル1本とかからつくるし。

菜衣子:それ、教授にも言われました。そういう人は自分でつくるんだよって。

後藤:でも、それも好きずきだから。どういう音像を目指しているか、っていう。でも音に関しての良い・悪いって一概に言えない。主観的なものも関わってくるから。絶対的な「良い音」っていうのが、客観的に見たらあるかわからないわけで。それでも自分の思う「良さ」をみんな信じてやるんだけどね、自分にとっての最高のものを探して。

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会場内『THE FUTURE TIMES』ブースでも蓄電器を展示しながらブースのLEDライトをまかなっていた

会場内『THE FUTURE TIMES』ブースでも蓄電器を展示しながらブースのLEDライトをまかなっていた

2011年の東日本大震災をきっかけにそれまでにも夢だった運搬可能なソーラーでの発電・蓄電システムの開発に挑戦したのは舞台制作を行なうネクストワンクリエイト有限会社。世界で初となる、ソーラーライブシステムを現実のものにし、ASIAN KUNG-FU GENERATIONのステージのソーラー電源周辺を一手に担っています。

蓄電池を常に30台用意しフェスティバルの会場でそれを補充し続けて…、というのはとても大変そうに見えるものの、実際にお話を伺うとライブステージの作り手側のチャレンジ精神をひしひしと感じる現場でした。もっと軽量化・コンパクトにできれば会場のすべての電気をソーラーでまかなえる日もそう遠くはなさそうです。

NANO-MUGEN FESTIVALでのソーラーライブシステムについては『THE FUTURE TIMES』のこちらの記事をぜひ!
「ライブ演出家が産んだ太陽光発電『ECO LIVE SYSTEM』─今、太陽光でライブをやることの意味」

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NANO-MUGEN FESTIVALの現場で『Solar Live System』をマネジメントするのはネクストワンクリエイト有限会社の林英勝さん(左)。普段は音響の仕事をされている下道聡(右)もソーラー電源担当として協力している。ソーラーエネルギーでのライブ運営についてお話を伺いました

つづく