crosstalk
2014.09.29

暮らしかた冒険家 meets

volume 3暮らしかた冒険家×後藤正文(ASIAN KUNG-FU GENERATION)音だって未来だって“選べる”

  • Text鈴木 絵美里
  • Photo伊藤 菜衣子, 池田 秀紀

第五回|どう響かせるか、どう伝えるか 〜伝え方の話〜(1)

今回、暮らしかた冒険家が訪ねたのは、バンドASIAN KUNG-FU GENERATIONのフロントマン、ゴッチこと後藤正文さん。音楽のみならず、2011年からは未来を考える新聞『THE FUTURE TIMES』を制作、無料で配布するなど、30代ミュージシャンきってのオピニオンリーダー的な存在です。これまでにも、脱原発の音楽イベント『NO NUKES』の現場などで交流を深めてきた暮らしかた冒険家と後藤さん。自身のライブステージにも太陽光エネルギーを用いている彼とともに、今回は21世紀を担う世代の「豊かさ」や「お金の使い方」、「伝え方」のおはなしをじっくりしてきました。ちなみに取材は、北海道で開催されている『RISING SUN ROCK FESTIVAL「BOHEMIAN GARDEN」に後藤さんがソロで出演された後に行われました。そんなフェス会場の熱も少し帯びたキャッチボール、どうぞお楽しみください。
「何が豊かであるか」もシフトしていくなかで、そういったことをどうしたらより広がりやすい形で周りへ伝えていけるかを考えながら、菜衣子さんとジョニーは日々「暮らしかた」の冒険中。ロックミュージシャンとして、また、ひとつの新聞の編集長として、さまざまな「伝え方」を実践中の後藤さんとは、そんなお話もしてみたかったようです。

菜衣子:後藤さんが、何かにただ“反対”と叫ぶやり方ではなく、自腹で無料の新聞を作ったり、ソーラー発電でフェスやったりしている一方で、『エセタイマーズ』をやっているのはなぜかってのも気になっているんですけど(笑)

後藤:あれは僕じゃないよ。似てるって噂だけど(笑)。でもね、でもああいうアジテーションってさ、人集めにはとっても有効だよね。「何やっているんだろう、あいつ」みたいな。そういうおもしろさを感じていて。自分なりに、清志郎さんやジョンレノンが大げさにやってきたことって、なんになるのかって考えてみた。そして、彼らは、ある種の偽悪とか偽善みたいに映るのかもしれないけれど、そういうこともわかっていて、あえてパフォーマンスしていたのかなって。エセタイマーズの人たちのことはよく知らないけれど(笑)。

ジョニー:『エセタイマーズ』は「似てる人」ですもんね。後藤さんに激似の人。

後藤:そう、似てる人だから(笑)。でもやっぱり、やり方次第で物事の届く射程が全然違うと思うんだよね。届く距離も違えば、届く場所も違うから、何が正解かとかじゃなくて、いろんなやり方をしてくしかない。それでひとりでも気持ちが変わるのであれば…いいんじゃないかな、と思うけどね。全部もうトライ&エラーでやるしかない。そのうちのどれかひとつで突破できればいいんじゃないかな。ミュージシャンっていってもさ、数は知れているし。同じことやってくれる人なんて、少ないわけじゃない?

菜衣子:「両方やる」ってどういうことだろうな、って思っていました。

後藤:エセイタマーズは俺じゃないから、よく分からないけれど(笑)。でも、つまり、俺が「いろいろやっているってことを知っている」って人もいれば「知らない」って人も多いわけで、別にそういうことは深刻に考えなくていい気がする。その時に自分の皮膚感覚として間違っていないって確信さえあれば。行動に対する意味は後からしかついてこないわけで「やってみる」って大事。やってみて怒られたら怒られたで、その時はその時のやり方があると思うし。自分たちがどういう反響を得たいのか。それによりやり方は使い分けていけばいいんじゃないのかな。

菜衣子:後藤さんって「どう見られるか」とか、この方法じゃマズい、とか、そういうのにとても敏感な方だと思うんですが、もとからそういう意識があったのか、それとも何かきっかけがあって気をつけるようになったのか、ご自分ではどちらだと思いますか?

後藤:うーん、どうなんだろうなあ……。でも、「自分がどんな人間か」っていうのは絶対、自分で決められないじゃないですか。結局は他人がどういうふうに自分を位置づけているのかが「社会の中での自分」なわけで。誰かに「自分がどんな人間か」を認証されないといつまでたってもアイデンティティ確立されないわけでしょう?

菜衣子:そうか。

後藤:誰かと関わり合うということで自分が世の中に存在することが、認められていく、というかね。だから、人からどう思われているか、ってすごく大事だと思うんですよ。
……ていうかさ、それでしょ、自分がどういう人間か、って。「いや、僕はね、本当に親切な男なんですよ!」って自分でずーっと言いつつ電車の優先席に平気で座っててもさ、ってこと(笑)。親切かどうかひとつとっても、それは本人が決めることじゃないんだよなっていうね。

菜衣子:なるほど。それって、若い時からそういう感覚をお持ちだったんですか? それとも不特定多数の人々に見られるような職業になってからのものでしょうか。

後藤:常々「自分のやっていることは意味のあることなんだろうか」という感覚がある。ポップミュージックなんて一番消費されやすいし、空疎なものに成り果てる可能性もある。人気だけを気にしていたら、いずれ「あいつはなんだったんだろう?」ってなってしまうかもしれない。それならまだマシで、忘れられてしまう可能性だって高い。評価されることは嬉しいけれど、自分が出るとお客さんが集まるっていうことに対する不安がないわけではなくて…。客寄せパンダじゃないけれど、「一体、自分は人気以外に何を持っているんだろう?」って怖くなる。そうそう、やたら僕にインタビューしにくる、とかさ。いや、このインタビューの悪口を言うわけじゃないけどね(笑)!学校の先生の会報誌とか、医者の会報誌とか。

ジョニー:そんなのまであるんだ!

後藤 :ロックミュージシャンが出てどうするんだよっていう場所にまで引っ張り出されるとさ(笑)。話すことないですよって(笑)。なので、「アップデートしないと怖い!」っていう感覚があります。自分のやっていることは普遍的なものなのか、あるいはものすごく短期的に消費されるものなのか、っていうことが、職業柄いつも気になる。だから、紙とか、レコードとかああいう強さのあるものが好きで惹かれるんじゃないかな。強く残るもので、残したい。

ジョニー:作家の古川日出男さんとの対談記事とか、読ませていただいたんですけど、そこをすごく意識されていますよね。本はいいよねっていうようなお話もされていて。

後藤:うん、本はレコードよりずっと昔からあるものだから…。もうそれがメディアとして強いっていうことを証明している。きちんと伝えたいし、自分がやったこととか、言っていることが、一体どういう人たちにどう響いているのかも、すごく大事。CDがたくさん売れたらいいってことじゃなく、ちゃんと話をしてるときに、あの曲はこういうことを表していますか?とか、そういうことが伝わっている人に会ったりすると、嬉しいし、自分の表したいことは人にちゃんと響いてるのかなと思える。僕たちのやっていることは基本的にキャッチしてもらう人が必要で、どういう人にどう受け取ってもらうかを無視できない。何かを作った瞬間、いや、作っている時から、ね。